Fluororesin
フッ素樹脂の特性と用途例






耐熱性(熱に強い)
連続使用可能温度は約150〜260℃と、樹脂の中でも最高クラスの耐熱性を持つ材料です。
自動車業界では、省エネルギー化や排ガス規制の強化に伴い、軽量化や高耐熱性が求められており、フッ素樹脂の採用が広がっています。
その耐熱性と低摩擦性を活かし、自動変速機(AT)のシール材、ブレーキパッド、ベアリングなどに使用されています。
さらに、PTFE被覆ケーブルは自動車の排気ガスセンサーなどに採用されています。
エンジン付近の高温環境でも使用でき、260℃を超える温度にさらされた場合でも機能を維持できる特性があります。
また、ATなどの油圧制御機器の電子化が進む中で、電線には耐熱性・耐油性が求められ、フッ素樹脂が活用されています。
最高使用温度(連続) | |
|---|---|
PTFE | 260 |
PFA | 260 |
ETFE | 150 |
フッ素樹脂の耐熱性を活かした用途例
■ 自動車部品
ベアリング/オイルシール/ATセンサー電線/コントロールケーブル
耐薬品性(薬品に強い)
半導体製造装置の内部では、多くのフッ素樹脂製品が使用されています。
半導体の製造プロセスでは、強酸や強アルカリなどの薬液が使用されます。
そのため、これらの薬液に耐えられる優れた耐薬品性を持つフッ素樹脂が材料として採用されています。
また、近年は半導体の高集積化・微細化が進み、製造工程での金属不純物の混入を抑えることが重要になっています。
薬液の純度低下や不純物は、半導体の品質や歩留まりに影響するため、高純度で不純物を出しにくいフッ素樹脂が使用されています。
PTFE | PFA | ETFE | |
|---|---|---|---|
酸 | 超優秀 | 超優秀 | 優秀 |
アルカリ | 超優秀 | 超優秀 | 優秀 |
有機溶剤 | 超優秀 | 超優秀 | 優秀 |
超優秀:ほとんどの薬品、溶剤に過酷な条件下でも侵されない。
優秀:一部の薬品、溶剤には特定の条件下では使用を留意する必要がある。
秀:使用する薬品、溶剤、使用条件を詳細に検討する必要がある。
良:一部の溶剤に溶ける。
フッ素樹脂の耐薬品性を活かした用途例
■ 半導体製造装置部品
薬液タンク/薬液槽/配管/配管継ぎ手/タンクライニング/ウエハーキャリア/
ウエハー搬送部材/バルブ/ポンプ/ベローズ/ダイヤフラム/フィルター/ハウジング など
耐摩耗性(滑りやすい)
フッ素樹脂は、固体の中でも非常に低い摩擦係数を持つ材料です。
この特性を活かし、機械部品や自動車部品など幅広い分野で使用されています。
工作機械に組み込まれるガイドレールなどの部品には、余剰物が固着しにくく、スムーズに動く摺動性が求められます。
これらの部品にフッ素樹脂コーティングを施すことで、低騒音で滑らかな動作を実現できます。
また、エアコン部品では冷暖房を切り替える切替弁に使用されています。
弁がスライドしながら移動して冷媒ガスの流れを切り替えるため、高い滑り性(低摩擦性)が必要とされます。
自動車分野でもフッ素樹脂は多く使用されており、ベアリングやワッシャーなど、低摩擦性が求められる部品に採用されています。
これらの多くは目立たない部分ですが、過酷な環境でも安定した性能を発揮する重要な部品として使用されています。
なお、フッ素樹脂単体では摩耗特性や荷重がかかった状態での変形(クリープ)に弱い場合があります。
そのため、用途によっては充填材を加えて特性を改良したフッ素樹脂が使用されています。
動的摩擦係数 | |
|---|---|
PTFE | 0.1 |
PFA | 0.2 |
ETFE | 0.4 |
フッ素樹脂の耐摩耗性を活かした用途例
■ 潤滑材として他の素材への塗布
摩擦特性の向上用
■ 自動車用部品
ベアリング/自動変速機のシール材/ブレーキパッド/ショックアブソーバ部品等
非粘着性(くっつきにくい)
フッ素樹脂は物質が固着しにくい(非粘着性)という特性を持ち、粘性のある物質を取り扱う機器に使用されています。
印刷機やコピー機では、インクや紙が固着したり詰まったりすると装置が停止し、大きなトラブルにつながります。
そのため、滑り性と非粘着性に優れたフッ素樹脂部品を使用することで、インクや接着剤、樹脂溶融物などの固着を防ぎ、安定した動作を実現します。
フッ素樹脂を使用することで、機器トラブルやメンテナンス回数の低減にもつながり、重要部品やメンテナンスが困難な箇所に多く採用されています。
プリンターでは、高温となる定着部にフッ素樹脂の非粘着性が活用されています。
定着ロールにはPTFEやPFAコーティングが施され、加圧ローラーにはフッ素ゴムやPFAチューブが使用されています。
また、定着ロールから紙を剥がす剥離爪にもフッ素塗料がコーティングされており、そのほかにも原稿スライド部材、転写ロール、軸受けなどにPTFE・PFA系コーティングが使用されています。
水に対する接触角(度) | 接着エネルギー | |
|---|---|---|
PTFE | 114 | 43.1 |
PFA | 115 | 42.0 |
ETFE | 83 | 45 |
フッ素樹脂の非粘着性を活かした用途例
■ プリンター・コピー機の摺動部分
コピー機の定着ロール/コピー機の排紙用部品
■ 家庭用調理器具
フライパン/炊飯ジャー/ナイフ等
絶縁性(電気を通さない)
フッ素樹脂製品は非常に高い電気絶縁性を持ち、各業界の厳しい規格にも適合する材料として使用されています。
非常時にも性能を維持できる信頼性や、メンテナンスフリーが求められる環境で活用されています。
PTFE・PFA・FEPは分子構造が対称的で分極が極めて小さいため、プラスチックの中でも非常に高い絶縁抵抗を持つことが特長です。
この特性を活かし、フッ素樹脂は電気・電子分野の絶縁材料として広く使用されています。
また、フッ素樹脂は優れた難燃性も持ち、災害時にも安全性の高い材料です。
特にPTFE被覆ケーブルは、超高温環境でも燃えにくく、導体の露出を防ぎながら機能を維持する特性があります。
そのためフッ素樹脂被覆ケーブルは、家電製品、情報通信機器、自動車、航空・宇宙分野まで、低温から高温まで幅広い環境で使用されています。
さらに、フッ素樹脂は高い絶縁抵抗と難燃性を活かして電線の細線化にも貢献します。
導体径や絶縁体の厚みを小さくできるため、省スペース化が可能となり、高速・高容量化が進む電子機器の小型化に大きく貢献しています。
現在では、スマートフォンやノートパソコンなどの電子機器にも広く利用されています。
誘電率 | |
|---|---|
PTFE | 2.1 |
PFA | 2.1 |
ETFE | 2.6 |
フッ素樹脂の絶縁性を活かした用途例
■ 電線被覆
ロボット/パソコン/通信/高周波対応/航空機電気系統等
■ 光ファイバーケーブル被覆
耐候性(屋外に強い)
フッ素樹脂は、多くのプラスチックの中でも非常に優れた耐候性を持つ材料です。
太陽光に含まれる紫外線による劣化がほとんどなく、長期間にわたり安定した性能を維持します。
耐候性促進試験では、約20年相当の環境下でも強度の変化がほとんど見られないことが確認されています。
そのため、屋外用途ではフッ素樹脂コーティングとして使用されることが多く、長期間の耐久性が求められる分野で活用されています。